2023年5月10日にピクシブ株式会社は、同社が運営するコミュニティサービス「FANBOX」で、AIによって生成された作品の取り扱いを停止すると発表しました。
停止した理由に、「現在のFANBOXの使われ方が、本来私たちが目指していたサービスとは違った形となっている。」という事を挙げています。
当面の間、禁止すると公表していますが、2023年12月現在ではどのような状況になっているのでしょうか?
本記事では、FANBOXがAI生成物の扱いを禁止したことについて、詳しく解説していきます。
FANBOXについて
そもそもFANBOXについてご存じでない方がいらっしゃると思うので、このサービスについて解説します。
FANBOXとは、東京都に本社を置くピクシブ株式会社が運営する、イラストや漫画を主に扱うファンコミュニティサービスです。
説明からお分かりいただけるように、FANBOXはクリエイターとファンを繋げるネットワークサービスの役割を担っています。
そのためクリエイター自身のファンに、自分の作品を公開してお互いに交流を深めることが可能で、他にも支援金をファンから受け取ることで、支援金のうちの90%をクリエイターが受け取れるといった、クリエイターの経済事情を支援する役目も果たしています。
FANBOXでは小規模のクリエイターが利用しやすい
XやInstagram、YouTube、ブログなど、今やクリエイターとファンが交流できる方法は様々ですが、FANBOXにしか無いメリットがあります。
そのメリットが、小規模のクリエイターが利益を上げやすいことです。
YouTubeを収益化するには、登録者や再生回数などクリアすべき条件がいくつかありますし、SNSやブログで集客しようにも、数多くのフォロワーとユーザーを獲得しないと、まとまった利益が入って来にくいでしょう。
しかしFANBOXは収益化の条件がほぼ無に等しく、例え1人だけのコアなファンがいるだけでも、ファン自身が望めば支援金をクリエイターに送ることが可能です。
イラストや漫画といった作品公開に特化したFANBOXだから実現できた強みと言えるでしょう。
FANBOXがAIに規制を始めた
イラストや漫画関連のクリエイターに利用されているFANBOXが、AIへの規制に乗り出したのは2023年5月のことでした。
当初から規制は厳格に
FANBOXの運営会社であるピクシブ株式会社が、規制を発表したのは2023年5月10日のことです。
同サービス内で、AI生成作品の取り扱いを当面一切禁止して、AI生成作品を用いた投稿への警告や非公開化、アカウント停止といった処分を行う方向であるとも発表されました。
当面の期間が経過した以降は、AI生成物の投稿自体は受け付けると公表されているものの、規制の厳格化を行う方向には変わりありません。
なぜ規制を始めたのか
このタイミングで規制を発表した背景には何があるのでしょうか。
pixivは、現在のFANBOXにはAIによって大量生成されたコンテンツが出回っており、この状態はFANBOX開設の理念とは異なると指摘しています。
クリエイターの熱意と技術で作られた作品が共有されるべき空間で、AIの作品が出回っていることを見逃す訳にはいかないでしょう。
また規制に踏み切った背景には、FANBOXに集まっていた批判もあります。
たくさんのイラスト作品が蓄積するFANBOXには、かねてより生成AIツールがイラストを学習する場所となっていました。
現在の日本では、AIツールが情報学習すること自体は問題ありませんが、その学習した情報を使って、既存の作品と類似した作品が生み出されていることには、著作権法や倫理の観点で問題があります。
クリエイターが多くの労力をかけて作り上げた作品が、AIによって「盗作」されている問題を、pixiv外部から批判されることが少なくなく、規制に踏み切る一つのきっかけになったと言えるでしょう。
AI生成物を禁止するにあたってFANBOXで行われた対策
2023年5月にAI生成物の当面の取り扱い禁止が発表されて以降、FANBOXではどのような対策が新たに取られているのでしょうか。
①監視システムを新たに導入
新しい監視システムの導入が発表されました。
監視システムの利用を通じて、児童ポルノ、盗作、他のクリエイターの活動を脅かす行為を迅速に発見して対処できるようにします。
・コメントやイイネがもらえる
・使いやすいデザイン
・フォロワーが増えやすい仕組み
・好みのAi動画が見つかりやすい
・仲介手数料0円の投げ銭機能
②AI作品への表示フィルタリング
AI生成物は短時間で大量に生成できるメリットがあるため、1人のクリエイターが投稿した大量のAIコンテンツが、FANBOXの表示画面を占拠することが発生し得るのです。
この問題を対処すべく、AIの生成物で構成されている作品を「AI生成作品」という別の枠組みで投稿し、1人のユーザーの作品が表示画面を占めないように対策することも発表されています。